「あなたの子育ての目標、ゴールは何ですか?」
そう聞かれてすぐに答えられる人はどれくらいいるでしょうか。
私は初めてこの問いかけをされた時には固まってしまいました。
改めて考えたことがなかったからです。
そして自分の育児を振り返ってみました。
子供はかわいいし大好き。
だけど、心配しすぎてつい口出ししちゃう。
ちゃんとして欲しくて、それが出来ないとイライラしちゃう。
いつも笑顔で優しいママでいたいけど、それだけじゃ子供はちゃんと育たない。
しつけをするのは親の務め。
だから心を鬼にして叱っている。
だけど、このつらさは何だろう。
どうして怒り過ぎちゃうんだろう。
日本で子育てをしている時は、このように悩みながら過ごし、子供との時間を100%楽しめずにいました。
そして、怒ってしまった後には「自分はダメな親だな・・・」と凹んだり。
けれど、海外に来て<ポジティブ・ディシプリン>というしつけ・育児論を学び、考え方が変わりました。
その結果、
イライラしたり子どもを怒ったりすることが減り、
子供達と過ごし時間を楽しめるようになり、
肩の力が抜けて子供たちとの関わり方も変わり、
家族の笑顔が増えました。
今回のブログはそんな体験を元に、今まで私が学んだポジティブ・ディシプリンの考え方や親なら知っておきたいしつけ・育児のマインドについてまとめています。
前向きなしつけ-ポジティブ・ディシプリン-って一体何?
ポジティブ・ディシプリンは、日本語では『前向きなしつけ』と訳され、『嫌われる勇気』という本で話題となったアドラー心理学、そしてそのアドラー心理学を教育に当てはめたルドルフ・ドライカーズという教育者の考え方を元に、科学的根拠に基づいて作られた2007年に開発されたしつけ・教育のガイドのひとつです。
ここで軽く自己紹介をさせて頂きます。
私は現在ブルガリアに住む駐在妻です。
日本では看護師として働いていたし、幼児心理学や幼児の成長発達については勉強もしてきたので子育てにはまずまず自信がありました。
けれど、夫が先行渡航していた半年間でその自信は崩れ去りました。
未就学児2人を抱えての完全ワンオペ、
それぞれの幼稚園・保育園への送迎や園の行事、
仕事、家事、引越し準備などに追われ、心身ともに限界な毎日。
子供にイライラしたり、怒鳴ってしまうことが増え、すっかり親としての自信を失っていた私。
その状態で頼る人も知り合いもいない国に渡航したので不安でいっぱいでした。
そんな時に息子が通うインターナショナルスクール・スクールカウンセラー主催の、Parent workshop(親向けの子育て講座)に参加し、考え方が大きく変わりました。
この親向けの子育て講座のベースとなる考え方こそが、ポジティブ・ディシプリン(Positive Discipline)でした。
ポジティブ・ディシプリンは日本では2009年頃から紹介されてきた考え方で、2019年4月よりポジティブ・ディシプリン日本事務局が発足し、活動をしています。
同事務局ではポジティブ・ディシプリンを下記のように表現しています。
(ポジティブ・ディシプリンとは)養育者が子どものこころや体を傷つける罰を用いた子育てから少しずつ距離を置き、子どもの健やかな発達と学びを促すような子育てに移行していくことを目的として養育者を支援するプログラムです。
ポジティブ・ディシプリン日本事務局きずく、「ポジティブ・ディシプリンとは」
「怒らない育児」と聞くと、ただ子どもを甘やかすだけで結局は子どものためにならないのでは。。。と思っていたけど、ポジティブ・ディシプリンの考え方は怒らない、けれど甘やかさずに自立を目指すという考え方でした!
子供が生まれたらすぐに親になれるもの?
私たちは日本で生まれ育つ中で、時が来たら
小学生になり、
中学生になり、
高校生になり、
社会人になり・・・
と、時間と共にその肩書きを変化させてきました。
そして子供が生まれると「親」という肩書きを手にいれることになりますが、果たして「親」とはどんな存在なのか。
一般的に、特に日本では「親=正しい存在でなければならない」という思いが強いと言われています。
では、正しい親とは一体どんな親なのでしょうか。
- いつも笑顔でいる親
- ダメなことはダメだと伝えることができる親
- 常に子供の模範となるような行動をとることができる親
さまざまな考え方があるかと思います。
けれどまとめてみると、親=しっかりしなきゃいけない、完璧じゃないといけない存在という思い込みでがんじがらめになっていませんか?
子どもが生まれたら親という役割を手にいれることになりますが、だからと言って何も習わずにしっかりした、完璧な親になれるものでしょうか。
私はかつてはこの思い込みに捉われていました。
完璧主義から抜け出せず、自分自身も子どももこうあるべきという思いから、よく子どもに怒ってしまっていました。
けれど今はそうは思いません。
確かに子供を育てる上で、親が子供に伝えるべきことはあるでしょう。
けれど、親=常にしっかりしていて、完璧な存在である必要はありません。
まずこの完璧主義から抜け出すことが、イライラしない子育てをする上での第一歩だと言えるでしょう。
あなたにとっての子育てのゴールは何ですか?
最初の問いに戻ります。
「あなたにとっての子育てのゴールは何ですか?」
こう問われた時に、日本では
- ちゃんとした子に育てること
- 自立した子に育てること
と答える方が多いかと思います。
ポジティブ・ディシプリンの考え方の中では、長期的なゴールの設定が子育てにおいて必要だとされています。
けれど、ここでの落とし穴は日本における「ちゃんとした子」の定義。
日本ではよく「他人に迷惑をかけないように」「外に出ても恥ずかしくないように」という点を気にします。
これは真面目で協調性を重視する日本人の気質や文化にも関係するかと思いますし、それも大切かもしれません。
けれど他人の目を気にし、怒られないように・迷惑をかけないように、と行動した結果残るものは何でしょうか。
私がインターナショナルスクールでポジティブ・ディシプリン講座を受けた時に他の親から出てきた言葉は
- Respectful(尊敬の念に満ちた、礼儀正しい)
- Resilient(弾力性のある、へこたれない)
- Self confident(自己肯定感のある、自信を持った)
- Empathy(思いやり、共感)
- Kind(優しい)
- Curious(好奇心のある)
- Smile(笑顔)
- Ambitious(野心的な)
- Social(社会的な)
- Healthy(健康な)
など、子供の性格や特性に関するものでした。
他者の目を気にするのではなく、自分の子供に10年後、20年後どんな風になっていてほしいかを考えてみませんか。
また、こうした子どもの長期目標を考えた時に『Perfect(完璧な)』という言葉は出て来ないのではないでしょうか。
完璧であることよりも、自信や思いやりを持っていてほしいと願う人が多いでしょう。
このように、子育てのゴールや子どもになってほしい姿を考えると、自然と子供との接し方も変わってくるのではないでしょうか。
ぜひご自身やパートナーと一緒に、子育てのゴールについて考えてみてください。
ちなみにこのゴール設定の時に、「親にとってのゴール」ではなく、「子どもが将来どうなっていてほしいか」を考えることがポイントです。
私自身、最初にこの質問をされた時には答えに困ってしまいました。
けれど今は【思いやり&好奇心を大切に、どんな環境でも対応できる自己肯定感を持った子】に育って欲しいと願っています。
ポジティブ・ディシプリンから見た親が知るべき育児のマインドとは?
先ほど「親は完璧な存在である必要はない」ということを述べましたが、それでは親が知るべきマインド、親に求められることとは一体何なのでしょうか。
それは子どもが安心感を感じられるような環境作りをして、子どもとの対話を通して理解を示し、課題を解決する援助を行うことです。
実際にポジティブ・ディシプリンでは、下記の4原則を大切にしています。
1.長期的な目標を決めること
ポジティブ・ディシプリン日本事務局きずく、「ポジティブ・ディシプリンとは」
2.温かさを与え、枠組みを示すこと
3.子どもの考え方・感じ方を理解すること
4.課題を解決すること
長期的な目標設定についてはすでにお話した通りですが、他の3つの原則についてご説明します。
子どもが安心感を感じられるような環境を作ること
心理学者ボウルヴィによる愛着理論(幼児の愛着形成はその後の人生において重要になるという理論)は幼児心理学、発達学を学ぶ人の間ではとても有名です。
特に3歳までの愛着形成はその後の人間関係に大きく影響されると言われています。
では3歳までに愛着形成ができればその後は大丈夫なのでしょうか。
答えはNoです。
心理学者マズローは自己実現理論(欲求5段階説)の中で
人間は自己実現に向かって絶えず成長する
Wikipedia,自己実現理論
と提唱し、下記の図のようなピラミッドで人間の欲求を示しました。
この図はピラミッドの下の段が満たされることで、より上の段への欲求が生まれるというものです。
子どもにとってもこの欲求は同じで、真ん中の段にある【所属と愛の欲求】が満たされていることは、安心して次の欲求に向かうための条件と言えます。
【所属と愛の欲求】とは下記のように定義されています。
自分が社会に必要とされている、果たせる社会的役割があるという感覚。情緒的な人間関係についてや、他者に受け入れられている、どこかに所属しているという感覚。愛を求め、今や孤独・追放・拒否・無縁状態であることの痛恨をひどく感じるようになる。不適応や重度の病理、孤独感や社会的不安、鬱状態になる原因の最たるものである
Wikipedia,自己実現理論
家庭は人が一番最初に接する小さな社会です。
その家庭が不安定では子どもは安心感を得ることができません。
つまり、親は子どもに家庭における安心感を与えることが必要だと言えるでしょう。
子どもの考え方・感じ方を理解すること
子どもにとって愛着形成や社会(家族)に所属しているという感覚・安心感が必要であることを説明しましたが、そのためにはどういった行動が必要でしょうか。
子どもが安心感を感じるために必要なことの代表的な行動は、親が【子どもの考え方・感じ方を理解すること】。
考え方・感じ方を理解してもらうことで、人は相手に受け入れられていると感じます。
そのためのには、まず子どもの話を聴くことが大切です。
そんなのいつもやっている!と思う方も多いでしょうが、本当にそうでしょうか。
確かに小さい子どもはよく親に話しかけてきます。
けれど、その言葉の裏側にある気持ちまで深く掘り下げていますか?
また、何か子どもがいたずらをした時や失敗をした時につい叱ったり、逆に言葉を補ってかばいすぎたりしていませんか?
親と子どもはとても近しいけれど、別の存在です。
なので相手の気持ちを何も言わずに100%理解するなんて不可能。
相手を理解するのに必要なのが会話や、より深く掘り下げた対話です。
言葉の表面を捉えるだけでなく、ぜひ対話を通してその裏側にある子どもの考え方・感じ方を理解するようにしてみてください。
思いもよらなかった答えが返ってくるかもしれません。
子どもに自分の言葉で語ってもらうことで、理解が深まるでしょう。
課題を解決すること
何か問題が起こった時に、対話を通して子どもの感じ方・考え方を理解したとします。
そうすると次に出てくるのは、どうやってその課題を解決すればいいのか、ということ。
課題を解決するというと、親が方向性を示さなければ!解決策を教えていかなければ!と思いがち。
だけど、それでは子どもの自主性は育ちません。
ポジティブ・ディシプリンの考え方では、親が解決策を示すことはありません。
課題を解決するのはあくまでも子ども本人であって、親ではないんです。
ここでも親に出来るのは、対話を大切にすること。
対話を通して、物事の本質を見据え今必要なことは何なのか、子どもが考える力や自分で問題解決する力を育てることが親に求められる行動であり、子育てをする上で必要なマインドだと言えるでしょう。
子育てのゴールを見据えて子供と一緒に歩いていこう
この記事ではポジティブ・ディシプリンの考え方、子育てに必要なマインドについてご紹介しました。
親だからと言って完璧を求める必要はありません。
ただ、子どもの保護者・一番の理解者として、その成長を側で支えていくこと、
そして、子どもの持つ力を伸ばしていくことこそが親に求められるマインド・行動だと考えます。
一部抽象的な部分もあったかと思いますが、具体的な子育ての技術としてまた改めて記事にまとめたいと思います。
この記事を読んで、子育てに悩んでいる人が少しでも肩の力を抜いて、今しかない子供との時間を楽しめるようになれば幸いです。
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